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「取り替えられれば良かったのにね」と思いながらも、
信武は敦盛と都姫の個性を尊重し大切に大切に育ててまいりました。
そして、敦盛と都姫が13歳となった年のある日のこと、
敦盛は信武に大切な話があると呼ばれたのです。
信武の居室に入って用意された敦盛は静かに用意された褥に着き、
「お呼びですか?父上」大切な話との事ですが…と控えめな声で
たずねると信武は少し困ったように頷いた。
「実はね、敦盛の出仕に関する話なんだ」
「出仕…ですか?」
「うん、実は…」
信武を尋ねて屋敷を訪れた客人が都姫を若君と勘違いをし、
「左府の若君は容貌が大変美しいだけでなく、学識も優れている」
と噂をしていたのが帝の耳にも入り、「そんなに優れているのに、
殿上をさせないとはどういうことだ。五位の位を授けるから早く元服
させて出仕させるように」と話があったそうだ。
「敦盛が人見知りで人と競うことが苦手なのは知っているから、
出仕はもう少し時期を見ようと思っていたんだけど…。
帝のご意向だからお断りすることは難しいんだ。」
「はい。」
「辛いとは思うけど、心の準備をしておいて欲しい。
都の裳着も敦盛の元服と同時に行うつもりでいるから日程が
決まり次第連絡するよ。」
「はい、失礼します。」
半ば呆然とした状態で敦盛は信武の部屋を辞し、
自分の住まう対の屋への廊を歩いていた。
父の前では「はい。」と内容を承ってはいたが、『どうしよう…』という思いで
頭の中がいっぱいだった。
宮中という場所は華やかで、そして少しでも出世を
しようと人々が様々に競い合う場所だと都から聴いて敦盛は知っていた。
『そのような世界で自分の様に父母と妹と一部の女房としか話す勇気も無いような者が
やっていく事が出来るのであろうか…。』
お上の御申し入れでは出仕など無理な話だと申し上げても、父を困らせるだそう思って
異論を言わず引き受けたが…。
「どうしよう・・・」
そう呟いて敦盛は肩を落とした。